Netdayクラブ −情報ー

2.ネットデイまでの各種準備作業

(1)地域行政、学校現場との調整作業

 ネットデイを開催するにあたり、学校現場、PTA、地元ボランティアという現場で動く方々とともに、地域の行政(教育委員会)との調整が大変重要となる。学校管理責任者は各校の校長の役目であるが、実際に校舎の管理を行っているのは教育委員会の施設課(担当)である。つまり教育委員会がへそを曲げると、工事に関する制約がかなり多くなり、結果的にネットデイが開催できなくなる場合もある。また逆に、教育委員会が協力的であった場合には、施設に関する制約も少なく、工事に自由度が出て成果をあげやすくなるし、費用面での支援も考えられることがある。

 今回は直接打ち合わせをしたのは、A市教育委員会とI町教育委員会だった。

 6月8日、A市教育委員会に旧知であるH教育長を訪ねて、実験の趣旨や内容について説明し、担当課長も同席の上で基本的に学校選定に合意をした。しかし翌9日、教育委員会内で協議した結果、A市としては「まず全小中高校の職員室にインターネットを設備する計画が先行していて、一般教室でインターネットを利用するにはまだ時期尚早であるという意見が大半を占め、モデル校を選定することができない」との回答が返ってきた。地域的にA市で1校という枠を考慮していたが、教育委員会の協力が得られないということが明確になったので、了解の下指定地域から外した。トップダウンはある場合は効果的であるが、今回はきちんと根回しする時間がなかったので、逆効果となったようだ。

 I町については、慎重に運んだ。A市の前例を参考にして、まずは教育現場から校長を通して、ネットデイ開催についての了解をとることとした。I町は予算の確保が難しく、パソコン教室も平成11年度までに町内全5校のうちの僅か1校しか設備されていなかった。ただ、教育委員会としてはY教育長をはじめとして情報教育についての理解は深く、議会で「ネットデイ」に関する質問がされ、4月には議会文教委員会と教育委員会が合同で、氷上郡教育委員会を訪ねネットデイについて説明を受けてきていた。

9月10日にI町教育委員会にM学校施設課長を訪ねた。打ち合わせでは明確に「ネットデイは小額の予算で設備が整備できることに大変興味を持っていた」と答えられ、町教委としてバックアップを約束してくれた。M課長は、ネットデイ当日だけではなく、下見ワークショップにも終日参加し、施設工事に関する判断を、その都度出してくれたので、工事が非常にスムーズに進んだ。またY教育長がネットデイ当日、早朝から鶴居小に来られ、ボランティアを激励されたことで、参加者の士気があがった。

 Y町については、山崎小学校PTA副会長で、龍野青年会議所理事長としてネットデイを推進するN氏が、町教委の担当係長と同級生で、かつネットデイについても協力的であるということから、町教委との折衝はN氏とA山崎小校長にお任せすることとした。結果、施設工事におけるすべての制約を外し、計画どおりの工事を行うことができ、また当日に飲料の差し入れを頂くなど、ボランティアへの配慮をしてくれた。

 H市については、3校でネットデイを開催することになったので、早期から旧知の教育委員会担当者を経由して、話し合いの依頼をかけていたが、結局最後まで正式に打ち合わせをすることができなかった。H市では平成9年度H市立S小学校で開催したネットデイで、接続したダイヤルアップ設備を教委の指示で取り外した経緯がある。これは「S小だけが特別では困る」という理由からであった。しかし平成10年度末に、H市立A小学校にスクールズオンライン・ジャパンの手によって、512KBの容量の専用線が引き込まれ、パソコン教室からインターネットが利用できる環境となった。H市では、平成11年度半ばまでに全小学校にパソコン教室を整備したが、インターネットに接続する計画は、平成13年度以降になる予定だ。

そのような環境下で、本来であれば今回の3校のインターネット接続は許可されないはずだが、A小という前例があったことが大きく影響した。参加各校の校長は、逐次手元資料を持って教育委員会を訪れ、ネットデイの説明をするものの、正式に教委としての回答は出せず「黙認」という立場を貫いた。当方からの話し合いの依頼も、「話を聞けば(接続もネットデイも許可できないという)結論を出さなくてはならない」ということで、実現しなかった(関係者)という。

ただこのような中で、ネットデイにおける施設工事関連の判断を、各校長に委ねてくれたので、不都合が判明した段階でその都度校長の判断によって工事が遂行でき、問題なく工事を行うことができた。

ネットデイ後、兵庫県連合PTA協議会会長(H市連合PTA協議会会長兼務)であるO氏より提案のあった「わんぱくちびっこ情報団2000」において、小学校11校、中学校6校にインターネット接続することについて、T教育長が「ありがたいことだから、どんどん応募するように」と発言していることからみても、ボランティアによるインターネット環境整備について「黙認」から「容認」へ進みつつあるとも考えられる。

 学校現場との調整は、まず実験参加のヒアリングから入った。学校管理者、情報担当教諭、PTA関係者に同席して頂き、実験の趣旨や目的、内容について詳細に説明を行った。「一度の説明ではよくわからない」という学校もあり、鶴居小、城巽小については、別途PTAの役員会に参加して、説明をした。

これとは別に、8/6には全校そろった上での合同説明会を開催している。

 この段階で、各学校用のメーリングリストがスタートする。最初はどこも事務局と情報担当教諭との連絡の様相が多かったが、徐々にインターネットによるボランティアの応募や、地域の教育関係者やPTA、ボランティアがメーリングリストに参加してくると、しっかりとネットデイの準備に向けたやりとりが交わされていくようになった。実施校によってメーリングリストの活用にばらつきはあるが、各校の利用状況は1月26日現在、以下の通りである。

鶴居小(180)、安室東小(65)、城巽小(88)、山崎小(187)、網干小(839)

このメーリングリストは、現在も運用が続けられている。

 実験参加の合意がとれてから、設備の整備に入った。この整備準備が学校管理者と情報担当教諭、事務局技術担当が具体的に打ち合わせる最初の機会となった。安室東小(8/23)、城巽小(8/24)、網干小(8/26)、鶴居小(8/27)と、パソコンの整備状況を事前調査した。ここで、インターネットを接続する際の技術情報の交流だけではなく、接続後の具体的利用方法やネットデイへの準備について、詳細な打ち合わせが行われた。山崎小については、すでにパソコン教室がインターネットに接続されて運用中のため、この打ち合わせは行われなかった。

 つづいて「インターネット接続隊」によっても実際にパソコン教室、または職員室のネットワークを、西播磨教育事務所に接続することになる。パソコン教室を接続する3校については、PTAや地域からボランティアを募って、たくさんの人数で22台のパソコンの設定を変更した。動作確認を行ったのち、ボランティアとの協働作業について、学校管理者および情報担当教諭と取り組みの確認を行った。山崎小ではこの打ち合わせは行っていない。

インターネット接続隊の実施日時は、下記のとおりである。

網干小(8/23)、安室東小(8/30)、鶴居小(8/30)、城巽小(9/16)

城巽小の接続隊が遅れたのは、新設のコンピューター教室の受け渡しが完了しなかったため。

 この後はネットデイ当日まで作業と打ち合わせを繰り返すことになる。まずは事前下見調査で、ネットデイに詳しい2〜4名が、学校図面を参考にしながら、どのような工事内容にするのかを、現場の先生方と打ち合わせる。実際にスチールワイヤーを通して、ケーブルが通ることを確認することも、この時点で行っておく。ここで、具体的にネットデイのイメージがはっきりと学校現場にも伝わることになる。

事前下見の実施日時は、下記のとおりである。

安室東小(9/10)、鶴居小(9/12)、城巽小(10/2)、山崎小(10/7)、網干小(10/21)

 事前下見で判明した「難所」を事前に解決するのが、事前工事である。地元の専門業者の方も加わって、ネットデイボランティアでは困難な工事、防火壁の貫通や各所電源の取り付けなどの作業を実施する。学校の先生方も加わって、10名程度が一緒に作業する。この時点で、ボランティア工事の詳細や工事ボリュームがほぼ明確になる。

事前工事の実施日時は、下記のとおりである。

安室東小(10/12,14)、城巽小(10/20)、山崎小(10/25)、網干小(10/24)

鶴居小については、事前工事の必要がないと判断した。

 希望する学校には、職員向けのケーブル成端(コネクタを圧着してネットワークのケーブルを自作する)講習会を実施した。ネットデイ後の感想によると、この成端講習会以降、急速に教職員のネットデイへの意欲が上がったという。

ケーブル成端講習会の実施日時は、下記のとおりである。

安室東小(10/8)、城巽小(10/18)、網干小(11/24)

鶴居小、山崎小については、現地で講習会を実施した。

 このような手順を経て、下見ワークショップ、ネットデイ当日を迎えることになるが、一度に上記のような手順を消化するのではなく、時間をかけて少しずつ段階を追うことが、受け入れる現場にとっては大変重要なことである。


(2)参加校のインターネット接続環境構築

ネットデイ実施前に、参加校にインターネット接続環境を構築した。その際のインターネット接続イメージは次のようになる。

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(参加校インターネット接続イメージ図)

参加校のインターネット接続環境構築のために次のような作業を行った。

(3)インターネット接続隊

「インターネット接続隊」では、事前に用意した機器の設置、動作確認、クライアントPCの設定を実施内容とし、事前にメーリングリスト、ホームページで募集したボランティア並びに参加校側教職員の参加で行った。

(1)   網干小学校インターネット接続隊

・ 実施日:平成11年8月23日

・参加人数:14名

・ 設備概要

コンピュータ教室は、20台の生徒用コンピュータと1台の先生用コンピュータ、それとWindowsNT4.0サーバーによって構成されている。すべてのコンピュータが教師卓下にあるHUBによってLAN接続されている。

・作業概要

 事務局がプロクシサーバ、TAの設置と動作確認を行い、ボランティアと教職 員は、それぞれ一人当たり2台〜3台を担当し、クライアントPCの設定を行 った。プロクシサーバ、TAは事前に設定が済んでいたため、接続確認を行う に留まった。クライアントPCでは、インターネットエクスプローラの設定を 変更し、プロクシサーバ経由でインターネットに接続するようにした。

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写真2-1 網干小インターネット接続隊

・接続隊後の対応

ソフトウェアの動作チェック 2日後、情報教育担当柴田教諭と一緒に、現地で使用中のソフトウェアの動作をチェックした。アクセスサーバー及びネットワーク機器の対応 HUBの増設を24日に作業TAの設置とアクセスサーバーのダイヤルアップ先の変更を27日に対応。

・接続隊の反省

準備不足だったので、設定等が当日現地対応となった。設定シートもなく、ボランティアの方々に迷惑をかけた。その後参加された鈴木孝氏から、設定シートを作成してもらい、その後の接続隊に利用した。

(2)   安室東小学校インターネット接続隊

・実施日:平成11年8月30日

・参加人数:15名

・ 設備概要

 コンピュータ教室は、20台の生徒用コンピュータと1台の先生用コンピュ ータ、それとWindowsNT4.0サーバーによって構成されている。すべてのコ ンピュータが教師卓下にあるHUBによってLAN接続されている。

・ 作業概要

事務がプロクシサーバ、TAの設置と動作確認を行い、ボランティアと教職員は、それぞれ一人当たり2台〜3台を担当し、クライアントPCの設定を行った。プロクシサーバ、TAは事前に設定が済んでいたため、接続確認を行うに留まった。クライアントPCでは、インターネットエクスプローラの設定を変更し、プロクシサーバ経由でインターネットに接続するようにした。この日は小学生もボランティアとして参加した。

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写真2-2 安室東小インターネット接続隊


(3)   鶴居小学校インターネット接続隊

・実施日:平成11年8月31日

・参加人数:3名

・ 設備概要

職員室内で、数台のコンピュータと1台のWindowsNT4.0サーバがLANで 接続されている。生徒用コンピュータは未整備であった。

・ 作業概要

 鶴居小学校の接続隊では、プロクシサーバの設置と数台のコンピュータの設 定のみであったので、ボランティアを募集せず事務局だけで対処した。企業 よりドネーションのあった2台の生徒用コンピュータを新規設置した。

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写真2-3 鶴居小インターネット接続隊


(4)   城巽小学校インターネット接続隊

・実施日:平成11年9月16日

・参加人数:22名

・ 設備概要

 コンピュータ教室は、20台の生徒用コンピュータと1台の先生用コンピュータ、それとWindowsNT4.0サーバーによって構成されている。すべてのコンピュータが教師卓下にあるHUBによってLAN接続されている。

・ 作業概要

 事務がプロクシサーバ、TAの設置と動作確認を行い、ボランティアと教職員は、それぞれ一人当たり1台〜2台を担当し、クライアントPCの設定を行った。プロクシサーバ、TAは事前に設定が済んでいたため、接続確認を行うに留まった。クライアントPCでは、インターネットエクスプローラの設定を変更し、プロクシサーバ経由でインターネットに接続するようにした。この日は小学生もボランティアとして参加した。

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写真2-4 城巽小インターネット接続隊