ネットデイの趣旨・意義・内容の周知については、6月から8月にかけて3段階に分けて実施した。まず参加校個別に現地で、学校管理者(校長または教頭)、情報教育担当教諭、PTA役員によるヒアリングを行い、資料などを提供してネットデイについての説明を実施した。
次に参加校合同説明会(8/6)において、全参加校の情報教育担当教諭(または代理)およびPTA役員を集め、さらにヒアリングの内容を補強、質疑応答を通して理解を深めた。
参加校の要望により、各校PTAの役員会に参加し、内容の周知につとめた。
受け入れ側の体制準備については、各校で学校管理者、情報教育担当教諭、PTA役員、地域コーディネーターによる実行委員会を立ち上げて、これを活動の基本とした。実行委員会では、実施スケジュールの検討、ネットデイの規模と内容、費用負担の方法、学校教職員の意識高揚、PTAの組織的支援の方法、教育委員会との調整を、役割分担してすすめた。
スケジュールは、「リレー」という方法をとることから、参加校合同説明会で各校に調整を依頼し、当日ほぼ決定した。学校行事など確定している予定の関係で、10月は毎週末にネットデイを実施するスケジュールとなった。
各校の実行委員会の連絡・調整用に、9月15日一斉に、学校メーリングリストを立ち上げた。当初は限られた学校関係者が中心であったが、メールアドレスを取得したり、インターネット経由でボランティア登録をした方が加わって、各校実施2〜3週間前から活性化した。現在の登録アドレス数は下記の通り。
(2)事前調査
○ 必要な作業
実施各校において、事前調査を実施した。事前調査はおおきく下記のような3つの作業に分けられる。
今回の実験では、姫路市内の3校においては、新たにインターネット回線をコンピューター教室に接続し、教室内パソコンの環境を変更する必要があった。
また鶴居小では、職員室からのインターネット接続先を変更する必要があった。
作業は、8月下旬から9月中旬にかけて実施し、姫路市内の3校では、PTAに呼びかけてもらい、ボランティアとともに教室内のネットワーク変更を実施した。詳細は、2.3.2及び2.3.3に記載した。
現地工事調査は、実際にネットデイ工事を行う可能性の調査を、実際に学校に入って行う。おおむねネットデイ実施の2〜3週間前に、ネットワーク関連や電気工事の仕事をしているボランティアや、ネットデイ経験者などが少人数で実施する。スケジュールに余裕がある場合には、ネットデイ実施1ヶ月前には、この作業を行っておいた方がよい。
まず、学校図面から全体の配線計画を行い、図面から読みとれなかったり、図面だけでは不安な箇所については、実際にルートが確保できるか確認する。この作業に情報教育担当以外の教職員が加わることで、ネットデイ実施への意識が向上する。また校区内や近所の工事業者によるボランティアがあると、ネットデイ当日工事およびネットデイ後のサポートにおいて大変有効である。現地工事調査には、約半日を要する。
現地工事調査でデザインされた全体の工事計画から、実際のネットワークデザインを設計する。設計された図面は、実行委員会の打ち合わせに諮られ、おおまかな見積もりとともに議論される。ネットワークデザインとともに、工法についての提案を行い、教育委員会の許可が必要な箇所についてはあらかじめ校長を通してお願いしたり、ネットデイボランティアでは技術的な問題で工事ができない部分について整理し、外部に依頼するか、下見工事を実施するかを決める。必要なる機器は、実行委員会での検討を経て、納期に余裕の必要なものは、この段階で発注しておく。
スケジュールとしてはこの時期までに、実行委員会では下記のような事項について確認及び実施しておく必要がある。
(3)下見工事
下見工事は、事前工事調査によって明らかとなったネットデイボランティアでは対応できない作業について、あらかじめ実施しておくもの。今回はスケジュールの余裕がなかったので、ネットデイ実施の1週間前くらいに実施したが、本来は2週間程度の余裕が必要。場合によっては、何度かに分けて工事を行う必要もあるので、地元の専門業者によるボランティアは不可欠となる。
また必要であれば、事前調査で作成したネットワークデザインを再設計し、工法とともに確定する。工法が決定すれば、具体的な作業グループの確定と必要工事ボランティア数がでる。あわせて、すべての機材・部材について調達を行う。
主な下見工事で行う主な作業は、下記のようなものとなる
・棟どおしのルートの確保
校舎の間にケーブルを渡す作業で、渡り廊下を利用する場合は数カ所防火壁が存在する場合が多い。ここが通せない場合は、防火壁を貫通してケーブルの敷設ルートを確保する。工事の際には、教育委員会の指導を受けて、消防法上の規約がクリアできる形で実施する。山崎小の場合は、渡り廊下が使用できなかったので、棟から棟へ空中配線を行った。
・縦系統の確保
通常、廊下の弱電端子盤においては、フロアを縦につなぐ配管が用意されていることが多い。これが直接利用できる場合には、下見工事でメッセンジャーワイヤーと呼ばれる針金を通しておき、ネットデイ当日の作業がスムーズに実施できるようにする。弱点端子盤でルートが確保できない場合には、校舎外部配線やフロア貫通という作業をやらなくてはならない場合がある。
・電源の確保
HUBを設置する場所に電源コンセントがなければ設置する必要がある。
下見工事の段階で、下記のような事項について確認及び実施しておく必要がある。
・工法の確定
工事方法が誰でも理解しやすいように、工事手順書を作成する。全体の工事設計は、できるだけ工法を統一することに心がける。工事手順書はガイドラインで、下見ワークショップの結果で変更されることがある。
・教職員向け技術研修会
ケーブル成端講習会の実施。この段階で一気に教職員の意欲があがる。
・ワークショップおよびネットデイ配布資料の作成
インターネットでも公開するようにする
・参加者の確定とボランティア保険への加入
・必要機器の仮設定
・ネットデイ当日のイベント企画
(4)下見ワークショップ
ネットデイ前日(鶴居小は1週間前)に行った下見ワークショップは、ネットデイ勉強会と予行演習をあわせたようなもの。3つの大きな目的を達成するために実施した。
・ネットデイで「完璧な」ネットワークを敷設するための徹底的な準備
・ネットデイ当日の班長や参加者のトレーニング
・参加者がネットデイの全容について体感する機会の提供
従来日本で開催されているネットデイの下見といわれる作業は、限られたメンバーで行う「下見工事」にあたり、ネットデイ当日同様広くボランティアを呼びかけるものではない。本実験では、「下見工事」は事前に地元を中心に作業しておき、リレーを展開するネットデイでの地域全体のスキルアップを図るため、別途前日に実施したものである。
下見ワークショップは、グループ別ミーティングと全体ミーティングで構成され、それぞれ下記の内容を実施した。
小人数の班別に分かれて、当日の工事を実際に現場でシミュレーションするグループ別ミーティングでは、
があった。また全体ミーティングでは、
縦系統の配線や棟わたりの配線などについては、この下見ワークショップの現地巡回確認の際に、プロまたは熟練者による別チーム(ルーティング班)が実施。参加者が見学できるように配慮した。またこのルーティング班は、下見ワークショップではグループ別ミーティングの際にアドバイザー役となって、各グループの指導にあたった。
具体的な下見ワークショップでの作業例として、鶴居小学校での下見ワークショップのタイムスケジュールとグループ構成を示す。具体的な作業内容については、資料3-4「下見ワークショップ実施例」に、また各校での下見ワークショップ実施状況については「コンテンツCD」に収録した。
下見ワークショップタイムスケジュール例
13:00 |
実行委員長挨拶(米谷尚子実行委員長) |
13:02 |
学校側ご挨拶(金川教諭) |
13:05 |
自己紹介 |
13:15 |
ネットデイ鶴居小の経緯・概要説明(学校側ーディネーター・岸原史明さん) |
13:30 |
ネットデイにおけるネットワーク敷設工事について(伊丹市総合教育センター指導主事・畑井克彦さん) |
13:50 |
現地巡回確認(学校側コーディネーター・岸原史明さん) |
14:05 |
グループ分け・グループリーダー及びネットデイ当日班長の決定 |
14:15 |
グループ別ミーティング (1)担当作業内容、役割分担、手順等の打ち合わせ・調整 (2)グループ発表の準備 |
15:30 |
全体ミーティング (1)ワークショップの進め方の説明 (2)グループ別発表(約5分)と質疑・アドバイス(約3分) (3)全体調整(部材・工具・人員・スケジュール) |
16:50 |
ネットデイ鶴居小に向けて(伊丹市総合教育センター指導主事・畑井克彦さん) |
17:00 |
終了 |
下見ワークショップグループ構成例
工事隊 |
ルーティング班(プロ及び熟練者チーム) |
職員室班 |
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本館1F班 |
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本館2F班(ネットデイ当日は、本館2F・A班と本館2F・B班) |
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本館3F班(ネットデイ当日は、本館3F・A班と本館3F・B班) |
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南館1F班 |
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南館2F班 |
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南館3F班 |
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記録・調査隊 |
記録班 |
調査班 |
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支援隊 |
受付・放送班 |
渉外班 |
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子どもミュージアム班(託児チーム) |
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炊き出し班 |
(5)ネットデイ
まず、ネットデイ当日のタイムスケジュールを示す。
ネットデイタイムスケジュール例
ネットデイ鶴居小スケジュール 司会&コーディネーター:和崎宏プロジェクトゼネラルマネージャー |
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8:30 |
ボランティアリーダー集合、受付の準備 |
9:00 |
入校(受付開始・体育館) |
9:30 |
顔合わせ
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10:15 |
実況検分と作業内容説明(各グループリーダー) |
10:30 |
作業開始
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12:30 |
昼食休憩 |
13:00 |
作業進捗状況確認と午後の作業方針の話し合い(リーダーのみ) ケーブル成端講習会(視聴覚教室) |
13:30 |
作業再開
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15:00 |
開通式
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15:15 |
後片付け、工具チェック |
15:30 |
反省会(グループごとに発表) |
16:00 |
記念撮影 |
16:15 |
終了 |
16:30 |
懇親会(希望者のみ) 視聴覚教室にて |
17:30 |
解散 |
受付 すべての人に名簿に記入してもらい、資料や生徒が作った名札を渡す。受付で当日の工事の内容がわかるように、下見ワークショップの発表結果を張り出しておくとよい。当初は入校30分前から準備に入ったが、1時間程度の余裕がほしい。 |
![]() 受付風景 |
挨拶 来賓・校長・PTA会長などに、ボランティア激励やねぎらいの挨拶をしてもらう。 |
![]() ![]() 教育長と校長 |
グループわけ 各班長に、当日の工事内容を簡潔に発表、参加者に自分のグループへの参加を呼びかける。事前に必要人数が下見ワークショップで判明しているので、希望班ごとに並んだ状態で、コーディネーターが人員調整をお願いすることもある。 |
![]() グループわけ |
工事作業 午前中の作業で、おおまかな配線工事はほぼ完了する。 天井を外し、天井裏に配線し、廊下から教室へ引き込む。工事途中でケーブルを踏んだりしなしように注意したり、脚立作業でのチームワークが大切。 |
![]() 午前中工事風景 |
昼食準備 主にPTAのお母さんたちが主力。ネットワークやコンピューターに縁がない人も、ここで参加は可能。当日参加できない人は、材料を提供することでボランティアをしていた。昼食中に班長のリーダー会議があり、進捗状況を発表する。必要であれば、人員や工具を配分することもある。 |
![]() 炊き出し隊 |
成端講習会 LANケーブルにコネクタを取り付けたり、情報コンセントをつけたりする。できあがったケーブルは、子どもたちの手で検査され、合格するまで繰り返す。 |
![]() 成端講習会 |
工事作業 午後は主に、仕上げのモール処理と情報コンセントの取り付け。職員室では「自分の机や教室には自分で」と慣れない手つきで女性教師も作業する。 実際に工事作業に参加しない支援隊の参加者らに「ネットデイツアー」として、工事の様子を見学する企画もこの時期。 |
![]() 職員室にコンセント |
ケーブルの検査 FLUKE社のDSP-4000(伊丹市総合教育センターより貸し出し)、DSP-2000で、すべてのケーブルのテストを、2班6名体制の子どもたちを主力とした検査班が実施する。 |
![]() ケーブルテスター |
開通式 全体の工事が終了した段階で、一同集合して開通式を行う。開通式では、当日の作業内容をビデオ編集したコンテンツを紹介し、コネクタを接続したパソコンから、インターネット経由で各校ネットデイのホームページを参照して確認する。 |
![]() 開通式 |
反省会 グループごとに集まり、工事や作業について、次回以降役立つ点や課題などの発表を行う。次の開催校へのバトンリレーは、この反省会で実施する。アンケートをここで配布し記入、回収する。 |
![]() 反省会 |
集合写真 全員が揃って、ネットデイの記念写真を撮影する。このとき、模造紙で子どもたちに看板を作ってもらうのも良いし、参加者で寄せ書きしてもいい。この後、解散する。 |
![]() 記念写真 |
ネットデイ実施のポイント
(6)ネットデイ後のフォロー
・メーリングリストの活用
ネットデイの連絡調整用に使用していた学校メーリングリストを、そのままネットデイ後の学校支援メーリングリストとして運用する。
例)教諭がパソコンのトラブルについて書き込んだところ、翌日地域ボランテ
ィアが調整のため学校に来てくれた。(網干小)
情報教育担当教諭が、随時学校でのコンピューターの利用レポートを発行。
PTAや地元ボランティアに告知している。(城巽小)
・学校別掲示板の運営
学校によってリーダーや用途は変わるが、掲示板を設置し校外との情報交流を行う。
例)マスコミ関係者の協力を得て、掲示板で子どもたち質疑応答を行いながら
社会教育を実施している。(城巽小)
・学校ホームページの作成
地域ボランティアのサポートで、情報教育担当教諭と子どもたちが一緒になって、学校ホームページを立ち上げる。ゆくゆくは、コンピューター教室を利用した地域住民のためのパソコン教室やホームページ制作勉強会などが企画にあがっている。
例)ネットデイで取材した内容を、子どもたちが自発的に、自分たちでまとめ
てホームページを作っている。ネットデイが終わったら、デジタル校区マ
ップを作ることになっている。(山崎小)
・PTA活動の一環として
学校のインターネット環境を利用して、PTAがインターネット講座を開催する。講師や補助講師として、ネットデイに参加したボランティアが指導している。
例)あすなろ教室というPTA行事でインターネットセミナーを開催。平日昼
間であったが、休暇を取って手伝ったボランティアもあり、「インターネッ
トでショッピング」というテーマに惹かれた母親たちが、ホームページの
検索などを勉強した。今後も継続・拡大する予定。(城巽小)
・地域コーディネーターの存在
ネットデイを運営した各校の地域コーディネーターは、そのまま学校との連携を持ちつづけて、パソコンの導入などの支援を行っている。
例)リース会社のリースアップのコンピューターを譲り受けたり、個人の古い
コンピュータを整備したりして、各教室に少しずつ設置している。(安室東
小、網干小)
・技術コーディネーターの存在
ネットデイに参加した地元ボランティアの内、スキルが高く、教育に理解のある人に技術コーディネーターをお願いする。学校のコンピュータに不具合が起こったら、まず担当教諭と一緒に原因を切り分ける。
例)サポート業者と実行委員会が連携して、学校を支援する技術コーディネー
ターの配置を行う。当面は他校の情報教育担当教員とネットデイボランテ
ィアが半数ずつだが、後者を増やしていく方向。学校、サポート業者、技
術コーディネーターは、メーリングリストで情報共有を行う。(姫路市)
・他校との連携
情報教育担当教諭の横連携ができている。ネットデイ開催5校だけではなく、自治体を越えた情報交流が始まっている。