Netdayクラブ −情報ー | |
6.実験の効果と課題
(1)ネットデイ参加アンケートの分析
1.アンケート質問項目作成の経緯
ネットデイ・リレーのスタータとなった市川町立鶴居小学校で行われた下見ワークショップから、ボランティアに関する考え方の収集を行った(資料4.1)。質問項目のコンセプトとして、ボランティア参加して得られたことを明確にするということをあげている。単なる奉仕ではなく、自分にとって有益であるから参加することが大切だと考えたからだ。
参加して得られたことについての意見を集約(資料4.2)して6項目にまとめ、質問項目とした。それに下見ワークショップへの参加の項目を追加して、下見ワークショップアンケートとした(資料4.3)。
参加目的、参加のきっかけについては、意見を集約し選択するだけでよい形にした。 ネットデイ終了後に取るアンケートであるので、短時間に行えるように配慮した。
2.全体的な統計(度数分布 資料4.4)
6項目を3件法(選択肢が3つ)で回答してもらい最大可能得点は18点となり、これをボランティア意欲の得点とした。有効総数は515であった。
ボランティア意欲の平均値は13.98である。
LANの工事の具体的な内容がよくわからないが112人分あるのだが、炊き出し班や受付班で工事を担当していないので仕方がない面がある。
6項目とその合計で多少偏りがあるが、正規分布しているものが多く、統計処理の対象として適当であると判断した。
参加目的と参加きっかけについて、度数順に並べておいた。クロス集計したが、特記すべきことは無かった。
3.信頼性分析
調査としてどの程度の信頼性があるのかについてα係数(折半法信頼性係数の平均値)を求めた。
α係数は .7671である。LANの項目の信頼性が低く(Alpha if Item Deleted .7816)省くのが適当であるが、6項目しかないため除外しなかった。
4.分散分析(平均値の差を検定)の結果と考察
下見ワークショップへの参加の有無、参加回数の多寡、性別を要因とする分散分析を行った。その結果は以下の通りである。(有意確率:差が偶然に生じる確率)
(A)下見ワークショップへの参加の有無(有意確率 .000)
下見ワークショップへの参加、不参加によるボランティア意欲得点の平均値を比べると、参加したものは、不参加のものとくらべ高い得点結果を示している。これについて一要因の分散分析を行ったところ、有意であった。(F(2,498)=18.845,p<0.0%)
下見ワークショップへの参加の有無
度数/N |
平均値/M |
標準偏差/SD |
|
知らない |
32 |
12.88 |
2.78 |
不参加 |
238 |
13.55 |
2.41 |
参加 |
231 |
14.73 |
2.27 |
下見ワークショップへの参加の有無・多重比較
知らない |
不参加 |
参加 |
|
知らない |
-.67 |
-1.86* |
|
不参加 |
.67 |
-1.19* |
|
参加 |
1.86* |
1.19* |
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下見ワークショップ参加の有無
下見ワークショップを行うことにより、工事の全体像が把握できる。工事の内容、タイムフロー、人的な割り振り等、考えて行動するための情報を模造紙に書いてまとめることにより、知の共有が可能となるとともに、ネットデイ当日に引き継ぐことができる。この仕掛けは大変有効に機能している。
(B)参加回数の多寡(有意確率 .001 .010 .021)
参加回数によるボランティア意欲得点の平均値を比べると、2回以上参加したものは、1回参加のものとくらべ高い得点結果を示している。これについて一要因の分散分析を行ったところ、有意であった。(F(3,511)=6.482,p<0.0%)
参加回数の多寡
度数/参加回数 |
度数/N |
平均値/M |
標準偏差/SD |
1回 |
409 |
13.73 |
2.46 |
2回 |
57 |
14.86 |
2.21 |
3回 |
24 |
15.08 |
3.86 |
4回以上 |
25 |
14.92 |
1.71 |
参加回数の多寡・多重比較
参加回数 |
1回 |
2回 |
3回 |
4回以上 |
|||
1回 |
-1.13 |
-1.35* |
-1.19* |
||||
2回 |
1.13* |
-.22 |
-.00604 |
||||
3回 |
1.35* |
.22 |
.16 |
||||
4回以上 |
1.19* |
.00604 |
-.16 |
参加回数の多寡
初めて参加した人と、2回以上参加した人との間に有意差が出ている。どうしても最初は全体像が見えにくく、2回目以降は要領がつかめるため、ネットデイを楽しむ余裕ができるということだ。500人参加で初めての人が400名、2回以上が100名であった。
2回目以降は有意差はみられない。
ある学校の情報担当の先生が自校でネットデイを実施した時には顔がこわばっていたにも拘わらず、次の学校では始終にこにこと笑顔が絶えず、「本当に楽しいです。」と言われたことは忘れられない。
(C)性別(有意確率 .000)
男性と女性のボランティア意欲得点の平均値を比べると、
男性は、女性にくらべ高い得点結果を示している。これについて一要因の分散分析を行ったところ、有意であった。(F(1,497)=15.593,p<0.0%)
性別
性別 |
度数/N |
平均値/M |
標準偏差/SD |
男性 |
281 |
14.38 |
2.53 |
女性 |
218 |
13.51 |
2.36 |
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性別
5.分散分析で有意差が無かった項目
意外な項目に有意差が出なかった。それは年代である。
年代
度数/参加回数 |
度数/N |
平均値/M |
標準偏差/SD |
10代 |
62 |
13.37 |
2.81 |
20代 |
64 |
14.03 |
2.04 |
30代 |
147 |
14.22 |
2.82 |
40代 |
174 |
13.87 |
2.34 |
50代 |
41 |
14.37 |
2.42 |
60代以上 |
6 |
14.33 |
2.54 |
年代・多重比較
年代 |
10代 |
20代 |
30代 |
40代 |
50代 |
60代以上 |
10代 |
-.66 |
-.85* |
-.50 |
-.99 |
-.96 |
|
20代 |
.66 |
-.19 |
.16 |
-.33 |
-.30 |
|
30代 |
.85* |
.19 |
.35 |
-.15 |
-.12 |
|
40代 |
.50 |
-.16 |
-.35 |
-.50 |
-.47 |
|
50代 |
.99 |
.33 |
.15 |
.50 |
0.325 |
|
60代以上 |
.96 |
.30 |
.12 |
.47 |
-.0325 |
10代は小学生がほとんどである。30代との間で有意差(.028)が出ただけである。後は20代から60代まで差がない。
子供たちは積極的に行動をしていた。インタビューや、測定機器を使って調査をしたり、ホームページを作ったり大活躍であったが、今回の質問項目では計れなかったようである。
グラフを見ると40代が落ち込んでおり、有意差があるように見えるが、統計上差がない。
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年代
6.全体を通しての考察
ネットデイの参加者が1000名を越える中で、アンケートを回収できたのが500名強であった。すべて完了してアンケートを取るべきだと考え、最後の段階で配ってアンケートに答えてもらったので難しい部分があったようだ。
下見ワークショップ実施の有無がネットデイの成功の秘訣であることが、このアンケート結果で明らかになった。普通のネットデイでは、下見というのはルーティングに精通している一部のメンバーで行う。今回も実は別の日に詳細な下見はしており、その上で一人一人の参加者が考えて行動でき、共同作業をされるメンバーと知の共有が可能となり、コミュニケーションが深まるように仕組まれている。下見ワークショップにはネットデイ当日の3分の1程度の参加者であったが、この人たちが中心となり、任された担当部分については自主的に取り組めたことが、やりがいにつながっていった。また、コミュニケーションもしっかり取らないと工事ができないため、人と人との支え合いが生まれ、それがやり終わった後の充実感へとつながったと思われる。
また、楽しい企画は口コミで広がりが出てくるのを体験できた。ホームページとメーリングリストを効果的に使い、学校からのお知らせだけでこれだけ多くの方が、集まったことは驚きであった。このネットデイの企画は、学校と地域が連携するという点で、これからの学校行事のあり方に参考になると思う。
参加者の5分の4が初めての参加であったにもかかわらず、リレーとして伝わっていくものが確かにあった。それは夢・感動であり、作業の工夫であり、人と人のネットワークであった。インターネットを使った子供たちの活動も、回を重ねるごとに工夫され生き生きとしたものになっていった。
ネットデイを行うためのメーリングリストが、ネットワークを活用するための支援ツールに変わって動き出している。また、ネットデイの実施を考えている学校が新たに7校出てきている。もはや次のステージに入っていることに地域の活力を体感している。
(2)参加校事後聞き取り調査の分析
ネットデイリレーがすべて終了した1ヶ月後、電子メールによって参加者にアンケート調査を実施した。自由記述形式を取ったことと、サンプル数が限られているので統計的な意義はないが、それぞれの立場でどのようにネットデイに関わり、何を感じたかという情報として課題となるキーワードを抽出することにより、今後の活動の指針を考える補助データとした。
回答数は、情報教育担当教諭(5名)、参加校学校管理者(3名)、PTA会長(2名)、ボランティア(14名)だった。
以下に設問と、回答のポイントとなるキーワードをまとめる。
1.情報教育担当教諭(5名)
設問1.情報担当教諭として、なぜネットデイを実施させたのですか?
設問2.ネットデイ実施に至るまでに苦労したことはなにですか?(教員の
コンセンサスなど)
設問3.ネットデイ実施までに、不安に思ったことはなにですか?
設問4.ネットデイを運営して、当日困ったことはなにですか?
設問5.ネットデイを運営して、当日良いと感じたことはなにですか?
設問6.実施されたネットデイに対して、どう評価しますか?
設問7.ネットデイ前後で、かわったことはなにですか?
設問8.今後どのように、校内ネットワークを活用していく予定ですか?
設問9.その問題点、課題はなにですか?
設問10.その具体的解決方法は見出されていますか?
設問11.ネットデイの教育的効果について、感じたことをお話しください。
設問12.またやりますか?
設問13.その他お感じのことがありましたら、なんなりと。
----------------------------------------------------------------------
設問1では、「インターネットの環境が各教室まで繋がることは、インターネットを活用した学習が児童にとってより身近になる」や「情報の共有が広がるよい機会」というインターネットを利用した情報教育環境の充実に教育的効果を認めてはいても、「必要性を早い時期から感じていながら予算の関係でなかなか事がうまく運んでいない」や「予算的には管理職が握っており思いを実現することができなかった」という障害があった。
設問2では、学校コーディネーターとして情報教育担当教諭にかかった負担が大きかったので「実行委員として、メールにてやりとりをしていたのが担当者であったので、担当者が一人走りしなければならない」や「学校長を中心にして進行し、それを受けて、情報担当が動くという形がとりたかった」とつながった。
「ネットデイの全貌が直前まであまりよく見えたかった」「自校が実施する場合の取り組み内容がわからなかった」は、そのまま「職員への説明が充分にできなかった」「多くの職員の賛同を得るかが一番気になった」となる。「PTAをどう盛り上げていくか」「教育委員会の承諾をどうとるのか」も含めて細かな事例に基づいたアドバイスが必要だ。
設問3では、「担当者の技量不足で、校内ランの構成・ハード面などわからない」は事前講習の機会を増やすことが必要。
設問4では、ネットデイにおける負担を「自分には即答できる用意のないものが多かったのに、みんな自分に聞きに来られた」という意見もあり、ここでも負担の分散が必要。
設問6では、「本来の目的からみる評価は,子どもたちがどう学校生活に取り入れて活用してくれるか」と、課題はこれからと認識している人もあり、フォローアップ体制の確立が必要。
設問8では、「(校内)イントラネットの活用」や「子どもと大人の意見交流
の場」「掲示板などでの意見交換」など、様々な企画があるが、課題として「機械が足りない」「教員の技術の向上」「予算の確保」など、現実的な問題にあたります。その解決方法として「PTAを中心に情報を発信」「人間の気持ちに働きかける地域の盛り上がり」などが提案されているが、具体的な成果はあげていない。
2.学校管理者(3名)
設問1.学校として、なぜネットデイを実施させたのですか?
設問2.ネットデイ実施に至るまでに苦労したことはなにですか?(教員の
コンセンサスなど)
設問3.ネットデイ実施までに、不安に思ったことはなにですか?
設問4.ネットデイを運営して、当日困ったことはなにですか?
設問5.ネットデイを運営して、当日良いと感じたことはなにですか?
設問6.実施されたネットデイに対して、総合的にどう評価しますか?
設問7.他の校区や保護者からの苦情など、問題はありませんでしたか?
設問8.ネットデイを実施することの効果はなにだったと思いますか?
設問9.ネットデイを実施し、どのような課題を感じましたか?
設問10.学校現場の立場として、ネットデイの取り組みは今後拡大したほ
うがいいと思いますか?
設問11.開かれた学校作りにボランティアや地域社会はどのように関わって
いくべきでしょうか?
設問12.ネットデイの教育効果について、感じたことをお話ください。
設問13.その他お感じのことがありましたら、何なりと。
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設問2では、心配として「ネットデイの知名度が低い」「小規模校では一部の教員に負担がかかる」「諸経費がどれだけいるのか把握できず、教育委員会に説明できにくかった」あげられた。
設問9では、「リーダーになる人材の発掘」「支援する核になる団体が確立していないと成り立たない」「機器の整備、その予算の確保」が課題としてあげられた。
設問10で「学校現場としては、ネットディを実施する中でハード面が整備されることは有り難いことだが、それに伴う経費が地方行政からの財政を確保しにくい」という問題は、ボランティアのレベルを越えているが、ネットデイ活動の拡大が解消するのではないか。
3.PTA会長(2名)
設問1.「ネットデイ」という言葉を最初に聞かれた時の印象は?
設問2.PTAをまとめられるのに、何に苦労して、どのように解決しまし
か?
設問3.他のPTA活動とネットデイの違いを、PTAの側から見るとなん
ですか?
設問4.ネットデイの問題点や課題について、感じられたことはなんですか?
設問5.ネットデイを実施して、PTAの中でこれまでと変わったことはあ
りますか?
設問6.PTAの参加者から、不平や不満はありませんでしたか?
設問7.今後どのように、成果を活かしていこうと考えていますか?
設問8.ネットデイを実施して、良かったと思いますか?
設問9.それはどのような点ですか?
設問10.ネットデイの教育的効果について、感じたことをお話しください。
設問11.その他お感じのことがありましたら、なんなりと。
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設問1で、(ネットデイとは)「全然なんの事かわかりませんでしたし、説明を聞いてももっとわかりませんでしたし、別世界の事と思っていました」と、やはり認知が低いことが課題としてあげられた。
設問2では、「ネットデイの意義を理解してもらうのに苦労しました」「どのような事をするのかを知っていただき理解をしていただくことが大変苦労しました」と、最初のPTA内コンセンサスに苦労している。
設問4では、「数人の知識と熱意のある人に甘えてしまい、結果的にその方々に偏って、大きなご負担をお掛けしてしまった」と一部の人に負担がかかりすぎたことを懸念。「イベントになっていないか」という意見には、ネツトデイの意義が伝わったかという観点からのものだった。
設問11では、「最初は本当に他人事で自分の所で出来るなんて事は想像もつきませんでしたが、本当に出来てしまいました。このことを忘れずにこれからは、我々PTAと先生と、地域とで、一歩一歩と進んでいきたいと思っています」と、協働作業と連携づくりというネットデイの狙いが浸透していると言える。
4.ボランティア(14名)
設問1.「ネットデイ」という言葉を最初に聞かれた時の印象は?
設問2.学校にはよく足を運んでいましたか、またそれはどうしてでしたか?
設問3.ネットデイに参加して楽しかったですか、またそれはどうしてだと
思いますか
設問4.ネットデイの問題点や課題について、感じられたことはなんですか?
設問5.ネットデイを実施して、自分の中でこれまでと変わったことはあり
ますか?
設問6.ネットデイであなたが得たものはなんですか、また失ったものはな
んですか?
設問7.今後どのように、成果を活かしていこうと考えていますか?
設問8.ネットデイに参加して良かったと思いますか?
設問9.ネットデイの教育的効果について、感じたことをお話しください。
設問10.ネットデイの社会的効果について、感じたことをお話しください。
設問11.その他お感じのことがありましたら、なんなりと。
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設問1によると、ボランティアの方々は、数年来ネットデイと関わってる方もあり、一般に比べると当初意識は高い。ただ正確な意義や活動を理解していた人は多いとはいえない。
設問2で、学校とのかかわりを聞いたところ、「昨年4月から子どもが小学校に通い出し、少し関わりを持つようになりましたが、懇談会、授業参観、運動会、音楽会、青少協関連事業など行事がらみで足を運ぶのが精一杯」「学校とは無縁に過ぎてきました。行くのは投票所として、住民健康診断、自治会お祭り」「校区の小学校には選挙の投票日しか立ち入ったことがありませんでした。だって学校は敷居が高かったもん」「地域の行事意外は行くことはほとんどありません」というように、一部PTA関係者以外はほとんど学校にはいっていなかった。
設問3で聞いたネットデイの感想は全員が「楽しかった」と答えている。それぞれに異なる充実感を感じているようすがわかる。
設問4では課題について聞いたが、「総合コーディネーターの力量」「第2の棟梁のような人が確保できるか」「リーダーがいる地域と、そうでない地域での温度差が大きい」という人材に関する意見と「地元からの動員意欲を早くからつのる」「事務局と学校側の話し合いももっと公開すべき」と運営に対する意見があった。
(3)ネットデイ実施における課題
本プロジェクトを実施するにあたって、まず早急に取り組まなければならなかった課題は「ネットデイとは何か」ということを広く理解してもらうことであった。日本でも1997年ごろから群馬、福島、兵庫などの県でネットデイが実施されるようになってきており、1999年8月には日本のネットデイ先進地の関係者らが集う「ネットデイサミット」が開催されるなどしているが、一般の認知度はまだまだ低い。さらに残念なことに、教育現場でさえもネットデイについて深く知る人が少ないのが現状である。また、コンピューターを使った単なるイベントにネットデイという名称が使われているケースもあり、そうしたものと混同される恐れも考えられた。さらに重要なのは、本プロジェクトが地域で支えるシリコンバレータイプのネットデイを実施しようとしていることを、参加校に理解してもらわなければ、実施する意味がないことであった。
資料4-6にまとめた「ネットデイ後の聞き取り調査」にあるように、ネットデイのことを「ネットデイの様子は以前にTVで見たことはあったけれど、自校が実施する場合の取り組み内容がわからなかったので、職員への説明が充分にできなかった」などはごく少数で、「インターネット環境をボランティアの力で学校に整備する」「何か大勢でネットワーク配線をする」「ネットワーク関係のパソコンの設定方法の勉強会」「遠いアメリカの、進んだ世界の話」「非常に進んだ学校の実践」「小学生とか中学生が、インターネットを通じて日本中とか世界中の知らないお友達と交流を深める日」「何じゃ、それ?」「全然分かりませんでした」などと、その理解度は千差万別多種多様であった。
そこで、まず参加を希望する学校には、実験として少額の補助があることを説明した上で、自分たちの力の範囲でできそうなPC教室を起点とした4〜5教室への接続をしようと提案した。この程度なら、ほとんど予算がかからない範囲なので表向きの了承も取りやすかったと思われる。そして、実際に参加校が決まり、実施に向けた打ち合わせを繰り返す中で、ナショナルネットデイとスマートスクールの違い(スマートスクール関連活動の調査報告書の2.2 世界のネットデイ関連活動の調査報告を参照)を校長、PTA会長、情報教育担当教諭に少しずつ時間をかけて説明し、理解を深めてもらった。そうすることで、今の学校の身の丈に合ったネットワークのデザインを、学校とPTAが協働して考えていく流れに自然と向かう結果となった。使う当てもないのに全教室を接続しても宝の持ち腐れとなってしまうからだ。また、学校側から教育委員会などに働きかけて、顔の見える付き合いを心がけ、ネットデイの趣旨を理解してもらうよう尽力した。
一方、ネットデイを支えるボランティア人材の発掘にも尽力した。なかでも、最も効果のあったと考えられるのが「ネットワーク構築セミナー・初級編」の実施(本編3.1 PCデイを参照)である。これは、ウインドウズ98の基礎やインストールおよび環境の設定、ネットワークケーブルの製作とLAN環境の構築を学べるというものだ。通常数万円の受講費用がかかる内容を、ネットデイにボランティア参加してくれることを条件に無料で開催すると告知したところ、定員を上回る応募があった。ネットデイの実施にあたっては、学校やPTAからボランティアの参加を広く地域に呼びかけるが、ふだん学校にまったく縁のない人々の注意を喚起するのは難しい。その意味でも、セミナーの実施は、各方面からの人材を集める効果があったと言えるだろう。
反省点としては、本プロジェクトがIPA調査事業という性格上、参加校の公募からネットデイ実施までのスケジュールがややきつめになったことで、準備が整わないうちに突入した感じのところも一部見受けられたことが挙げられる。ネットデイの準備期間は、開催が決定してからネットデイ当日まで通常4〜6ヶ月が目安と考えられる。特に今回は、5校のリレー形式での実施であり、2学期という行事の多い時期と重なったことから調整が難航し、いったん決定した日程を2週間繰り下げた学校もあった。同じ理由から、新聞などの各種メディアへの広報活動も十分行き届いていたとは言いがたい。こうした点は、ネットデイの認知度向上に深くかかわる問題だけに注意したいところである。
なお、ネットデイ前のこうした取り組みは、ネットデイ全体を統括・調整する総合コーディネーターの力量にある程度、かかってくるといっても過言ではない。こうした中心になる人材がいない場合、本プロジェクトのような大がかりなネットデイは実行しにくく、実行できたとしても、今後の地域の発展に貢献するという真の目的の達成は非常に難しいと言える。
ネットデイは、単にインターネット接続の工事を「みんなで楽しくやって良かった」というだけでは済まされない。つまり、インターネットを使ってどのような学習や活動をおこなうのかが、ネットデイ後の大きな課題となる。それは、パソコンやネットワークの管理をどうするか、子どもたちの個人情報をどう保護するか−などの課題にもつながる。さらに、その延長線上に、学校を核とした新しい地域社会の基盤づくりという最終課題があることも忘れてはならない。
こうした課題を克服していく第一歩として、まず、ネットデイに携わった人材のネットワークを生かして、継続的な学校支援体制をつくっていくことが必要になるだろう。具体的には、情報学習の時間に先生をサポートするボランティア組織やネットワークの技術面を支える人材バンクの整備などが挙げられる。ただし、こうした組織は、地域住民を中心に自発的に立ち上げられることが前提となる。そうでなければ、開かれた学校がボランティアの協力を得ながら地域の核となっていく流れを生み出すことはできない。
そこで、まず学校側は、ネットデイで整備された設備を積極的に使い、その成果をさまざまな形で広く情報発信していかなくてはならない。すでに、本プロジェクトの参加校の中には、子どもたちも参加してホームページをつくり、一般だけでなく全国の子どもたちやPTAの保護者に向けた情報発信を始めたところもある(資料コンテンツCD参照)。こうした足元からの取り組みは、インターネット先進校との交流のきっかけになるほか、子どもたちの学校での様子を知りたいという思いを持つPTAの意識の高揚にもつながる。また、本プロジェクトに参加した5校の子どもたち専用の電子掲示板を使った交流が進んでいることはすでに述べたが、この中から交流学習のヒントを得られないか模索する動きも出始めている。また、本プロジェクトでは今後、子どもたちがデジタルカメラで作製した校区マップを使った他校とのネット交流や、自由な時間にだれでも受けられる域外講師による遠隔授業などを実施し、その成果を本プロジェクトを統括ホームページ上で公開する予定にしている。
さらに、上記のような学習や活動を円滑に進めていくため、情報教育担当者だけでなく教職員全体がパソコンやインターネットを使いこなす能力を持つ必要がある。本プロジェクトに参加したある学校では、ネットデイ後、情報教育に対する関心が高くなり、教職員の多くが積極的に利用するようになった。従来の研修などによって半強制的に学ばされるという姿勢から180度転換した形であり、自発性を生み出すネットデイの効果の表れと言えるだろう。ただし、せっかく出てきたやる気も、従来のような"個人任せ"の体制のままでは長くは続かない。この点については、学校長などが率先して教職員の情報教育に時間と経費をかける体制を整備していかなくてはならないだろう。
最後に、全国各地でネットデイの輪を広げるために、自分たちの培ったノウハウの共有と人材のリンクを心掛けることも忘れてはならない。本プロジェクトでも、兵庫県内のネットデイ先進地・氷上郡で活躍した技術ボランティアなどが、ネットデイ当日やワークショップに多数参加し、私たちの活動を後押ししてくれた。そうしたことから、本プロジェクトの総括ホームページには、5校それぞれのネットワーク論理図や配線図、作業の足どりに関する資料をまとめて公開している。本プロジェクトにかかわった技術ボランティアなどの人材が、他地域で開催されたネットデイにボランティアで参加するケースも出始め、地域を越えた連携も生まれつつある。