ネットデイで学校革命!
スマートスクールがつくる次世代地域社会の基盤
米国の「NetDay」活動は、地域ごとに運動を呼びかけ、推進する「オーガナイザー」と、必要なネットワークや設備・機器を提供する「スポンサー」、それに実際の作業を手伝う親や教師、地域住民で構成される「ボランティア」によって支えられている。
スポンサーは、技術や資金面で「NetDay」をサポートする企業や個人。技術面での協力やツールの供給、ボランティアの教育などを行う企業や組織、個人によるテクニカル・スポンサーと、製品やサービスを提供したり資金協力を行う企業や組織、個人によるファイナンシャル・スポンサーの二つがある。これらのボランティアやスポンサーたちを組織化するのがオーガナイザーで、「NetDay」は、ボランティア、スポンサー、オーガナイザーの三者が揃って初めて実現される。
日本のネットデイ活動の今後を握る鍵は、紛れもなくこの「オーガナイザー」の存在だ。ボランティア、スポンサーを束ね組織化して、ネットデイを成功に導く。教育関係者だけが情報教育環境の充実を目指して行うのではなく、開かれた学校が地域のコアに復活することを目指して、社会的な取り組みとしてネットデイを実施させる触媒となる。筆者は、この「オーガナイザー」として、草の根の指導者としての市民起業家の存在に注目している。
産業革命が慈善事業家を、工業集積が新たな政府指導者を生み出したように、インターネットを情報基盤とする市民起業家(Civic Entreprener:シビックアントレプレナー)が生まれている。彼らはビジネスにおける起業家と共通する個性をもっており、リスクを恐れず、強い信念に裏打ちされた勇気を持って、経済とコミュニティを結合する協働作業の担い手としてリーダーシップを発揮している。「二一世紀においていかに成功できるか」という楽観的なビジョンに基づいて行動する彼らは、インターネットによって世界的に連携している人的ネットワークを持ち、思想的な協力意識によってを支えられていると言って良い。彼らは広範で、志が高く、長期的な利益によって動機付けられており、いつもチームとして行動し、それぞれ異なった役割を果たして相互に連携しあっている。「経済とコミュニティが、相互の利益のために連動する関係を築く」ことを目的として、協働作業を推進するために、創造的なリーダーシップを発揮している。
市民起業家は、NPOや市民グループから出てくるとは限らない。その出身は、行政や大学、民間企業の場合もある。大切なのは、地域のために努力を惜しまない彼らの存在を、地域社会が正しく評価することにある。地域のニーズを出発点として、協働の機会と専門化された資源を積み上げながら、コミュニティが未来に対して積極的で前向きな選択ができるように仕向ける彼らの手法には、住民参画型の意思決定システムがあり、まったく異なる背景、職業、経験を持った人々が地域で活躍する協働の仕組みがある。互いに連携することで既存社会に影響を与え、完成度を高めていくには、この新しい構成がいかにスムーズに浸透するかに依存している。
地域のさまざまな課題について、住民自らの手によって解決しようという彼らのプロセスは、地域に根ざしたイベントとしてのネットデイを通して、目的化され硬直している地方の教育システムを、徐々に改革していくだろう。本来の「次代を背負う子どもたちを健やかに育てる手段」として教育システムが見直され、開かれた学校づくりとともに学校の壁が溶けていく日もそう遠くないことが期待される。
[BACK] [HOME]
|