ネットデイで学校革命!
スマートスクールがつくる次世代地域社会の基盤
主にボランティア主体で展開されている日本のネットデイは、連携する仕組みが不十分であることから、行政、技術、教師、地域などの課題を抱えている。
行政の熱意や協力の度合いによって、地域間で情報インフラの整備に大きなばらつきが生じている。ネットデイは、これまでにはなかった形の協働作業を学校現場で実施するのだから、行政側に趣旨・目的を明確に提案し、理解を求める必要がある。現在このようなアプローチの多くは、各地の教育委員会への折衝に留まっており、今後のネットデイは教育関係者の事業ととらえられるのではなく、地域活性化につながるポイントを押さえて、行政幹部や予算を握るセクション、議会への提案が必要となっている。
政府が進める校内LAN整備とネットデイの関係も整理が必要だ。日本政府が進めるバーチャルエージェンシーでは、教育の情報化が柱の一つに据えられ、二〇〇五(平成一七)年度中には「すべての学校のすべての教室にインターネットを引き込む」ことを目標に計画が立てられている。文部省もこのビジョンに沿って、学校施設の改築などの際に一部補助を行う。あわせてネットデイの推進を、二〇〇〇年三月、初めて公式に発表し、同七月には教育助成局施設助成課の委託により、(社)日本教育工学振興会に「新しい教育環境構築のための調査研究委員会(通称ネットデイプロジェクト推進委員会)」を設置、平成一三年度からのネットデイ活動における文部省の支援の在り方を検討している
近い将来「校内LANは当たり前」の状況になるのは明らかで、ボランティア工事によるネットデイは、安価な配線業者と化し、その意義を急速に失う可能性がある。すなわち、「ネットデイ」にかかる新しい実施理念の構築が必要とされているのである。
急速に進歩するテクノロジーに対する技術的な課題も大きい。ネットデイの成果がすぐに陳腐化してしまう懸念があるのだ。だからと言って手をこまねいていては、いつまでも始まらないというのがネットデイ支援者の総意だ。現在できうる最良の環境を残し、幹線に補助ラインとして複数のケーブルを敷設することで、可能な限り長期間利用できるように考慮したり、ネットワーク設計の段階で、将来的に光ファイバーの敷設も想定しておくと良いだろう。
さらに、先進地シリコンバレーでは、ネットワークセキュリティについての課題が注目されている。内部のセキュリティはセグメントの多重化に対応する安価なネットワーク機器の供給と学校現場での教育・指導が急がれ、外部からのアタックには、保守管理を行う教員のスキル養成が不可欠だ。校内のシステム管理者としての役割を担うためには、地域の技術的協力と、米国におけるテクノロジーコーディネーターのような存在が必要だと思われる。
現場教師の課題は切実だ。各教育委員会で教育プログラムを実施しているが、時間や規模的な制約があり、なかなか十分な効果を得られていないという。現場では、自発的に取り組む教師の割合が少なく、他はその教員に頼っているという構図が見える。「ネットワークを授業に使うのではなく、授業のためにネットワークを使う」という発想の転換が必要だ。インフラ整備も重要だが、多くの場で情報化教育が継続して実施できる環境が必要だ。
日本でのネットデイは、小規模で開催されている例が多い。これは、ネットデイ関係者が地域への広がりを求めているにも関わらず、保護者や地元住民の理解を十分に得られておらず、教育関係者やボランティアが主体となって実施されていることを表している。しかし、地域ぐるみの体制が整わないことには、地域支援による継続的波及効果は望めない。構想段階からの地域の参画をデザインし、ネットデイを積極的に地元住民が企画するように図るコーディネート能力が必要となっている。
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